FC2ブログ
未分類日記以前の天童の家RSS|

感情失禁


病院へ毎日通っている。一日も欠かしたことがない。へへ、皆勤賞ものだなぁ(笑)
だいたい 10時頃に家を出る。病院への所要時間は、約10分。
妻は、ベッドで仰臥しながら自主リハビリ中だったり、またDr.回診中の時もある。
病院への到着が少し遅くなると、玄関まで迎えにきている時もある。

談話室(3階)から駐車場が見えるものだから、車を降り玄関へ向かう私を認め、玄関で待っている。(笑)
談話室で、昨日別れた後の些細なできごとを話し合う。
孫がまた来てくれたとか、リハビリの仕方が変わったとか、主治医や看護師との会話を話す。
こちらからもあまり変わり映えもしない他愛ないことを報告する。
他人が聞けば、別にどっていうことない話題だろうが、二人にとっては、そんな時間が楽しいのである。

楽しいから毎日行くが、ずーっと傍に一緒にいるわけではない。
妻は、リハビリがあるし、自主トレもやるから、その間、私は談話室で本を読んでいる。たくさん読んだ。
主に藤沢周平文庫本を読み返してる。たまに渡辺淳一や瀬戸内寂聴も読んだ。寂聴の「死に支度」は一日で読了した。

でも、やはり藤沢周平が面白い。再読、再再読なのだが、それでも感動する。
18日は、中公文庫『夜の橋』を読んだ。テレビに背を向け本を読む。音声も話声も気にならない。

以下は、「泣くな、けい」の最後の部分である。

 「それについて、お奉行にじつはお願いの儀がございます」
 と波十郎は言った。
 「ん? 何だ」
 「それがし、ご承知の通り、先ごろ妻を亡くしております。まだ先のことでござりますが、何分不自由でもあり、一周忌を済ませたら妻を迎えたいと考えております」
 「ふん、わかった」
 と弥一右衛門は言って、手酌で酒をあおった。
 「そのけいとか申す女子を、家に入れたいというのであろう」
 「はあ。奉公人であり、憚りあることでござりますが」
 「そんなこともなかろう。養い親を立てれば、誰も文句は言いはせん」
 「お願いと申しますのは、その儀でござります。どなたか、しかるべきおひとにお橋渡し願えませぬか」
 「よかろう。わしが骨折る。誰もいなければ、わしが引きうけてもよい」
 弥一右衛門は、銚子を持ち上げて波十郎に酒をついだ。
 「その女子に惚れこんだ気持は、わしにもよくわかるぞ。相良。わしとて木石ではないからな。それとも女子の方から惚れて来たか、こら色男」
 御納戸奉行は、あまり酒癖がゆくないようだった。

 奉行の屋敷を出て、夜の道を歩きながら、波十郎は、謹慎を解かれた夜に、けいとかわして言葉を思い出していた。
 この家を出て行こうと思ったことはないのか、と波十郎が聞いたのに対してけいは、思いましたが、そのたびにいろいろなことが起きて、と頬を染めて笑い、こう言ったのである。
 「でも、もどる家もございませんから」
 今夜の奉行との話を聞かせたら、けいは喜ぶかも知れないが、その前にまた泣きはしないかと、波十郎は心配だった。

「泣くな、けい」を読み終わろうとするとき、その最後の行が、溢れでたあついものでぼやけ、しっかり読めない。
瞬けば、あつい筋が頬を伝い落ちる。誰かに見られたら、それこそ恥ずかしい。老いた男が泣いている姿は見られたものじゃない。

だが、涙が次々と溢れ出るのが止められない。顔を外に向け他人に見られないようにする。
ふ~む、これはもう始末におえないなぁ。まるで感情失禁、イヤ、まさに感情失禁そのものである。
自身に不快感はない。むしろ深い感動が快い。
しかし、この涙は、度をこしてる。感情のコントロールができなくなってのだなぁ


スポンサーサイト



  1. 2015/01/20(火) 01:00:00|
  2. 未分類|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:4